社会を明るくする運動・講演会

                        講演会    於 四谷区民センター

            「虐待の連鎖をとめるには」

          
講師  岡田 ユキ氏(歌手・サークルダルメシアン代表)
             アドヴァイザー 高橋 利一氏(養護施設  至誠学園長)

                             主催 新宿区更生保護女性会
                             共催 新宿区保護司会



講演内容

幼児期より家庭の愛を知らない私は、家庭内暴力、兄からの性虐待、
自殺未遂、を体験して今がある。
過去の自身と向き合い、吐き出すことで現在までの人生を清算したが、
実の親兄弟から受けた虐待を告発する・・・不安の中ではあったが、当時
の私には自身のトラウマを克服し、自己再生の実現が最優先であった。
当時、「虐待」という言葉はあまり問題視されておらず、子供が親を告発
するなど世間の常識からは全くタブー。
その禁を侵す者として私が悪人視され、無視された。親から充分な愛を
受けた人間には理解できないであろう、しかし、6年前の当時から
「被虐体験の無い人間も必ず心の病に無縁でなくなる時がくる」と訴え
続けてきた。現在、心の傷やストレスに苦しむ人間が多く、そのはけ口を
求める現実を知った。
どうして私が数年後のこのような現実を予測できたのか?
幼少期から苦しんできた人間にはいつか苦しみの限界があり、何等かの形
でその苦しみを吐き出さざるを得ない事実を本能的に知っていたのだろう。
私は何度も自身の過去と向き合い、疑問をぶつけ、納得する事で立ち直り
ができた。しかし、「納得」は決して「忘却」ではない。外部から見えない家庭
内での異常行動は、「忘却」では解決できない事実の重なりであった。
最近は「心の重大な苦しみをもちながらも回復は望まない」傾向にある。
苦しみの克服をせずに病んだ心のままで親に寄生する意識に、現在社会の
「心の問題」への取り組みの甘さを痛感する。鬱積していた愛憎を吐き出し、
心の平安を得れば、誰でも新しい出会いと豊かな愛情を受けいれることが
でき、真の再生につながる。
私にとっての財産は、かけがえのない愛をくれた「人」であった。









早稲田大学広域BBS会を代表されて
早稲田大学 大学院 横澤 和哉 様

私は、主に保護観察中の少年や悩みを抱える子供達のサポートを行う、
早稲田大学広域BBS会の一員として活動している。多くの子供達との
出会いの中で、彼ら彼女らが心の奥底に虐待の傷を負って生きている
姿を、これまで何度となく目の当たりにしてきた。
歌手であり、またサークル・ダルメシアンの代表でもある岡田ユキさんは、
幼少から虐待を受けてきた過去をもつ方である。現在は、実名でご自身
の過去を語り、児童虐待防止・被害者支援に精力的に取り組まれている。
勇気ある行動に、共感の輪が広がっている。

「助けてもらえるんだということが、わからないのです」
「楽しい時間が続くように、思い出をしまってしまうのです」
「虐待を受ける子供ほど、親から信頼されているのです」

これまでの私の活動のなかでも、子供達と楽しい時間を過ごすことが
できたのに、その後は子供達の関係が築けないということがありました。
でも、岡田さんのお話を拝聴し、子供達の事を、少し分かってあげられた
ような気がします。お話のひとつひとつに重みがあり、はっと気付かされる
瞬間が多々ありました。明日は、施設での学習ボランティア。子供達に少し
でも笑顔を届けることができるだろうか。子供達はどんな表情を見せてくれ
るだろうか。時間の許す限り、彼ら彼女らとじっくり向き合ってあげたいな。
そんなことを考えながら、これからも頑張ろうと思った。













新宿区更生保護女性会会員
嶋田 潤子 

まずは岡田ユキさんの強さに敬意を表します。
ご自身の受けた虐待を乗り越えて、子育て、更に虐待防止の活動を
なさるということは、なかなかできないことだと思います。岡田さんのお話
から、どういう状況下で虐待が始まるのかという家族関係などが見えて
きましたが、それでは、どうしたら虐待が防げるのかという問題の答えは、
高橋利一先生のお話のほうにあったと思います。
実際に多くの虐待児童を預かるという現場にいらっしゃる先生のお話を
もう少しじっくり伺うことができたらと、残念に思いました。
今の子育てが密室での子育てになってきていることは、大変怖いと思います。
親の欲望を子供のために我慢するということが無くなってきた現代では、
高橋先生の言われるように、子育てを社会全体で担っていくようにしなけれ
ば、解決しないことと思いました。






新宿区更生保護女性会会員
遠山 昭


講師の岡田ユキさんご自身が、幼児期から家庭での愛を受けることなく、
家庭内暴力・性虐待を経験された事実を本にして、世の中に発表し、講
演活動をもされている勇気に敬意を表したいと思います。
また、歌手が本業の岡田さんは暗くて辛い過去に苦しみ、自殺未遂を体
験されている方とは、想像もつかないほど明るく嬉々として歌われるお姿
を拝見し、胸にこみ上げてくるものを感じました。
児童虐待防止法の改正が行われましたが、私たちは自分達の地域の中
で目を光らせ、子供達の健やかな成長を見守っていくことが、大切である
と思いました。








至誠学園とは?

児童相談所を通して措置される保護者と暮らせない2歳から20歳の子供
たちを、児童福祉法の精神に基づいて家庭にかわって養育している民間の
児童養護施設です。

児童養護施設とは

子供達は7つのグループホームで生活し、地域の学校へ通学しながら自立
支援を受け、早期の家庭復帰を目指した援助を受けています。
モットーは、(明るく、直く、健やかに)
子供達の潜在的な能力を見出して伸ばし、人格形成の正常な発達に大きく
寄与しています。家庭復帰ためのファミリーケースワークや本人の自立援
助を行い、子供達が将来望ましい社会人になるための育成をしています。

学習・心理指導

子供達は立川市内の小学校・中学校・高校に通学しています。
過去の環境ゆえ活かされなかった能力伸長のために、日常学習とは別に
ボランティアに依る個人指導も行われています。また、心理的問題をもつ
子供には、セラピストが定期的なカウンセリングを行うことで育成の援助に
あたっています。特に幼児の昼間の保育は、昭和53年に地域に開放され
た立川子供の家で地元の子等と共にモンテッソーリ教育を受けています。

ショートステイ事業

立川市、日野市からの委託事業として、家族の都合で養育が出来ない時、
1週間程度預かります。

都市家庭在宅支援事業(アドヴォゲーター)

平成6年、都市部に於ける養護施設などの児童福祉施設の付加事業と
して実施されました。現在はいじめ、不登校、精神的トラブル、虐待、家族、
育成問題等、子供と家庭に関する問題に専用電話による専門家の無料
対応を行っています。
365日、24時間体制の継続的な支援です。

電話 042−524−2365まで。

社会福祉法人  至誠学舎立川 至誠学園理事長  
高橋 利一氏


法政大学教授であり、独立行政法人福祉医療機構による助成を受け、
学園長をしておられます。
平成16年度「子育て支援基金特別分助成事業」で 児童養護施設の
[被虐待児処遇プログラム開発事業] が優れた取り組みとして
大きな評価をいただきました。








改正児童虐待防止法が参院本会議で成立し、来春施行される。

児童虐待防止法の主な改正点

・国、地方公共団体の責務
虐待を受けた児童に対する治療などを含む医療体制の整備

・出頭要求
虐待の疑いがある時、都道府県知事は保護者に児童を伴った出頭を
求め、調査できる。応じなければ、再度出頭を求めることができる。

・立ち入り調査
知事は再出頭要求が拒否された時、地方裁判所、または家庭裁判所
などの許可状をとり、住居に立ち入って児童の捜索ができる。

・保護者への指導
虐待を行った保護者が勧告に従わない時、知事が児童を一時保護し
強制入所措置などができる。

・保護者の面会制限
一時保護や施設入所に同意しているケースでも保護者の面会や通信を
児童相談署長が制限できる。強制的な施設入所で面会や通信が制限
されている時、知事は子供へのつきまといや施設近辺でのうろつきを
罰則付きで禁止できる。






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